極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
「おかえり、さくらちゃん。今日も親父さんの弁当、いただいたよ」

「ありがとうございます」

 帰りがけのお客さんにお礼を言い、厨房に繋がっている裏のドアから入ると、お父さんが片づけをしていた。

「お帰り、さくら」

「ただいま」

 奥の部屋に向かい、荷物を置いてエプロンを付ける。そして店頭に出ると、お母さんが忙しなくお客さんの対応に当たっていた。

「お母さん、会計は私がやるよ」

「ありがとう、じゃあお願い」

 十六時に調理が終了し、従業員は帰宅。閉店の十九時までは両親がふたりで店を回している。日によって私が帰ってくる頃にはほぼ売り切れている時もあるから。

 でも今日は珍しく大量に残っていて、値引いたためお客さんが殺到していた。

 だけど少し経つと客足も引き、閉店時間まであと一時間を切った頃、お母さんがコソッと耳打ちしてきた。

「今日はまだ、さくらの愛しい彼は来ていないわよ?」

「……そ、そっか」

「昨日も一昨日も来なかったし、今日あたり恋しくなって来る頃じゃないかしら」

 微笑ましい目を向けられ、非常に居たたまれなくなる。

 でも、今日は会えるかもしれない……と思うと、自然と頬が緩んでしまう。
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