My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4

 そんな私に王子は続けた。

「それよりお前はいいのか? 書庫を探さなくて」
「え?」
「言っただろう、お前の求めるものも見つかるかもしれないと」
「あ、その、……私、実は文字が読めなくて」

 すると王子は目を丸くし、私をまじまじと見つめた。

「会話は出来ても、文字は読めないのか。不思議なものだな」
「あ、はぁ……」

 なんだかその視線が落ち着かなくて、曖昧に頷く。
 ――そういえば、王子が私の正体を知っているのかどうか、まだわかっていない。

「それなら仕方ないな。丁度良い、お前に訊きたいことがあるんだ。僕の部屋へ行こう」

 王子はそう言うと再び私たちに背を向け歩き出した。

 思わずセリーンとアルさんを見上げる。
 二人も怪訝そうに眉を顰めていて、私はごくりと喉を鳴らした。

(王子が私に訊きたいことって、何だろう……?)

 ――嫌な予感しかしなかった。
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