My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
彼は奪うようにしてセリーンの手から笛を取り、こちらに背を向けた。
「僕は絶対にあいつを許さない。母さんはずっと待っていたんだ。あいつが迎えに来るのを。なのに、あいつは」
「ならなんで、一思いに殺さないんだ?」
ラグの発した恐ろしい言葉にびくりと王子の肩が震えた。
「その書物には、笛の音によって王を殺す方法も記されていた」
「!?」
――笛の音によって人を、殺す?
(あの笛にそんな力があるなんて……)
オカリナに似た可愛らしい楽器が、急に恐ろしいものに見えた。
「まぁ、笛なんて使わなくても一緒に住んでんだ。いくらでもその機会はあったはずだけどな」
「ラグ!」
王子の身体が小刻みに震えているのを見て止めに入る。だが彼は構わずに続けた。
「絶対に許さないと言いながら、結局迷ってんだろ」
「うるさいと言っている!」
もう一度王子は叫んだ。
ラグの短い嘆息のあと、室内はしんと静まり返った。