My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「こんなに、なんだ?」
妙に冷静なセリーンの問いかけに、ぱっとその視線は外された。
「う、うるせぇ! とにかく、お前は何もせずここにいればいいんだ。わかったな!」
そっぽを向いてしまった彼の耳が赤くなっているのを見て、今の彼の言葉が本心だとわかる。
(道具じゃない?)
と、セリーンが短く息を吐いた。
「カノンが動けないというなら、私が行っても良いが」
ハっとして彼女を見る。
「寧ろ、この国を知る私の方が適任だろう」
「セリーン」
「無駄だ」
私の言葉に被るようにツェリウス王子が低く言った。
「母さんを連れて来ても城の中に入れるわけがない」
それは先ほどラグも言っていたことだ。
「で、でも、私たちだってこうして入れたわけですし、変装とかして」
「それに、母さんが今どこにいるのか僕にもわからない」
「え?」
王子はゆっくりと窓の外に視線を移した。
「母さんは旅の踊り子だ。僕も小さな頃は母さん達と国中を転々としていた」
「旅の?」
「あぁ。だから、母さんを見つけるのはほぼ不可能だ」
セリーンと共に落胆の息を吐く。
それでは確かにどうしようもない。
「ありがとう」
「え?」
ふいに聞こえたお礼の言葉に顔を上げると、王子がこちらを見て微笑んでいた。