My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「俺が倒れたりするからいけねーんだ。カノンちゃんは悪くないから、そう怒鳴るなって」
するとラグは大きく舌打ちをして、どかっとソファに座り直した。
それを見てきゅっと唇を噛む。
さっきアルさんからラグの子供の頃の話を聞いて、わかってやって欲しい、そう言われたばかりだけれど……。
「でもな、お前も悪いんだぞ?」
アルさんが続けて彼に言う。
「は? なんでオレが」
「最初にカノンちゃんから離れたのはお前だろ?」
「オレが離れたわけじゃねぇ! そいつが勝手に」
顎で指されまたもムッとする。
「だって、ラグがあんな」
と、その時はぁ~という長い溜息が重なった。
そちらを見ると心底呆れたような王子の視線とぶつかって。
「さっきからなんなんだお前たちは」
「――す、すみません」
私は慌てて謝る。
そうだ。ここは彼の部屋で、しかもこんなときに口喧嘩なんて王子が怒るのも当然だ。
でも。
「特にお前だ。ラグ・エヴァンス」
いきなり名指しされ、ラグが眉を寄せる。
「なんではっきりと言わないんだ? だからカノンもわからないんだ」
「?」
ラグの眉間に更に深く皴が刻まれる。
私も王子が何を言いたいのかわからなくて首を傾げる。
「殿下、それ以上はちょっと……」
アルさんのなんだか気まずそうな声音に被るように、王子は続けた。
「好きなら好きとはっきり言えばいいんだ」
「っな!?」
ラグの妙に上ずった声を聞いて、遅れて私の口からも声が漏れた。
「え?」