My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4

28.二人の王子


 ユビルスの術士であるサカードさんの瞳も、僅かに大きくなった気がした。
 と、こんなときにいつも真っ先に止めに入る声がないことに気付く。

(あれ? クラヴィスさんは……?)

 またしても彼がいない。さっきフィグラリースさんを連れて塔から出ていくのを確かに見たのに。

「――えっと、殿下、どういうことです?」

 代わりにそう訊ねたのはアルさんだ。
 王子はサカードさんから視線を外さずに続けた。

「僕は、術士とは恐ろしい者たちだと思っていた。術士が僕の命を狙っていると知り、心の底から恐怖した」

 ちらりとプラーヌスを見ると、彼は焦点の合わない瞳で床を見つめていた。

「だが、ここ数日術士と過ごしてみてわかった。術が使えると言うだけで僕たちと何も変わらない。同じ複雑な心を持った、人間だと」

 そんな王子の言葉をアルさんが口をぽかんと開けたまま聞いている。

「嬉しければ思い切り笑う。仲間のためを想って怒る。……恋もするみたいだ」

 ラグの方はなんとなく振り返れなかったけれど、きっと彼も驚いているに違いない。
 皆が絶句する中、王子は強く握った拳を胸に当てた。

「敵となれば恐ろしいが、共にこの城を……そしてこの国を守ってもらえたら、これほど心強いものはない」

(王子、そんなこと考えてたんだ)

 なんだか胸が熱い。

 ――暗殺者を恐れ、同じ術士であるアルさんやラグに護衛を頼んだ彼。
 でも今彼は、その“力”だけが欲しくて頼んでいるのではない。術士を理解した上で術士と共にありたいと、そう言っているのだ。

「このまま彼らに頼めば良いのでは?」

 肩を竦め、冷たく答えるサカードさん。しかし王子は怯まなかった。
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