My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
「それにしても思い切ったことを考えましたね。殿下」
アルさんが苦笑しながら、でもどこか嬉しそうに言う。
「あぁ。王として、どうしたらこの国を守れるかずっと考えていた。始めは反対されるだろうが――」
「術士なぞに頼った私が、バカだったのだ」
王子の言葉に絞り出すような低い声が掛かった。――プラーヌスだ。
「衛兵! 衛兵集まれぇーー!!」
急に大声で叫び始めたプラーヌスにアルさんがはぁと大きな溜息を漏らす。
「まーだそんなこと言ってんのか。いい加減諦めろって」
最早呆れたふうだ。きっと皆同じ気持ちに違いない。
しかしプラーヌスは元々細い目を限界まで開き、恐ろしい顔つきで続けた。
「諦められるものか! 私はずっと、ずっとアンジェリカの幸せを願って生きてきたのだ!」
アンジェリカ……王妃様のことだ。
その血走った目がツェリウス王子を見る。
「お前の存在を知り、どれだけアンジェリカが気に病んだかわかるか! 全てお前がいけないのだ。お前が現れたせいで全てが狂ったのだ!!」
慟哭とも取れる怒鳴り声が部屋に轟く。
(そうか……この人は、デュックス王子のためというより、王妃様のために……)
昨日王の寝室で初めて見た王妃様の姿が頭に浮かんだ。
酷くやせ細った、今にも崩れてしまいそうな女性。
会ったばかりの私でさえ酷く危うく見えたのに、親であるプラーヌスは毎日どんな想いで彼女を見ていたのだろう。
思えば、街中のお医者さんを城に呼んでいたのも、もしかしたら王様のためではなく、王妃様のためだったのかもしれない。