My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4

「わ、私たち、人を捜して旅をしていて、その途中フェルクに立ち寄ったんです。そのときに」
「旅? 君たちは、デイヴィス医師の助手をしているのではないのか?」

 そう更に訝し気に問われて焦る。

「え、えっとそれは」

 彼に、どこまで真実を話していいものかわからず困窮していると、はぁと大きな溜息が聞こえてきた。

「あいつが医師ってのは嘘だ」
「!?」

 そうはっきりと言ったのはラグ。

「嘘?」

 ラグの方をゆっくりと振り向き、眉を顰めるフォルゲンさん。
 ハラハラするが、彼はいつもの調子で視線を合わすことなく続けた。

「あいつはただの術士だ。旅の途中でここの王子と出会って、護衛にと城につれて来られた。医師という名目でな」
「そ、そうなんです。お城に入るためには医師としたほうがいいだろうと、ツェリウス王子が考えて」
「殿下が……」

 彼はそう言ったきり思案するように黙ってしまった。
 こんな説明ではやはり信じてはもらえないのではないか……そう不安になった頃。

「君たちは、王陛下だけでなく、ツェリウス殿下をも守ってくれたのだな」
「え?」

 私が小さく声を上げると、彼は最初に体調を診てくれたときのように微笑んでくれた。

「この国の者ではない私がこの国で医師を生業にしていられるのはツェリウス殿下のお蔭なのだ。殿下にはとても感謝している」

 王子が国民に支持されているとは聞いていたけれど、フォルゲンさんもその一人なのだと知り驚く。
< 293 / 330 >

この作品をシェア

pagetop