My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 4
ふぅともう一度息を吐いてセリーンがアルさんに言う。
「そういうわけで、兄の方に相談に来たわけだ」
「そうなんです! どうやって断っていいかわからなくて」
「一言“お断りします”でいいんだ、そんなもん」
背後からラグの不機嫌そうな声がして、私は振り返る。
「だって、折角あんなふうに誘ってくれたのに、そんな簡単には断れないよ」
ちなみに、先ほどの花束は後から部屋にやってきたメイドさん……昨日料理を運んでくれたあの彼女が花瓶に飾ってくれた。
彼女もデュックス王子からの花束だとわかっていたのだろう、綺麗ですね、素敵ですねと言いながら終止にこにことしていて、なんだかとても居たたまれない気持ちになった。
私は視線を落として続ける。
「それに、デュックス王子が招待したかったのは、医師の助手をしている私で、私じゃないし……」
王子は私が嘘を吐いていることを知らない。だからと言って今更本当のことも話せない。
それもまた、乗り気になれない理由の一つだった。
呆れかえったようなラグの溜息。
私は顔を上げ、アルさんに言う。
「それと、これからビアンカに会いにいくので、アルさんも一緒に行けたらと思って」
すると彼は思い出したようにあぁと声を上げた。
「例のフェルク人医師の。解決したのか?」
「解決って感じでもないんですが……でも多分それを話したらビアンカとは本当にお別れだと思うので」
「そっか、わかった。俺もビアンカにはお礼言いたいしな。多分、殿下ももうすぐ終わると」
アルさんがそう言いかけたとき、謁見の間へと続く扉が開いた。
「お待たせしました。こちらへどうぞ」
私たちを迎えてくれたのは、爽やかな笑顔のクラヴィスさんだった。