恋は、二度目のキスのあとで―エリートな彼との秘密の関係―


『おい、瀬良、これ教科書じゃ……っ』
『そうです。こいつが千絵の教科書使えなくした犯人だって言ってんのに、先生が相談にも乗ってくれないので、じゃあ自分でやり返すしかないなって思って。同じように使えなくしてやってるんですけど』

『そ、相談には乗っただろ……? ただ、別に相手も悪気があってのことじゃ……』
『ああ、別にもういいです。警察行くし。これ、器物損壊でしょ。教育委員会とか生ぬるいことしか言わなそうだし、警察行って被害届出した方が早いかなって。俺がダメにしたこいつの教科書は一冊だけど、こいつは千絵の教科書全部ダメにしたし』

『いや、だからって……』
『俺は、千絵が身に覚えのない嫌がらせされて傷つけられたっていうのに、なぁなぁで終わらせるつもりはない。先生のこと、もう信用できないし自分で動く。だって、先生はなんにもしてくれないんですもんね?』

相手はPTA会長の娘だ。
きっと、担任の先生だけではどうにもできなかった部分もあるんだろう。
それを見越してか、職員室全体に聞こえるような声で言った瀬良さんに、教師陣は静まり返った。

怖い怖い沈黙のあと、教頭先生が私と女子生徒に事情を聞き、結果、私の教科書は新しく学校が用意した。

担任の先生も謝ってくれたので、警察に行くことはなかったけれど、その一ヵ月後、女子生徒は他の高校に転校していった。
PTA会長をしていた親とともに、校内での立場をなくしたからだという噂をあとから聞いた。


< 163 / 171 >

この作品をシェア

pagetop