恋は、二度目のキスのあとで―エリートな彼との秘密の関係―
「白石サン、すっごい頑なで全然許してくれないんだもん。それに、別れてから俺にだけツンツンした態度だし。結構本気で悲しいんだよね」
「〝白石サン〟? 高校の頃って名前で呼んでなかったっけ?」
「あー、そう。でも、今は職場が一緒だから」
ヘラヘラ笑いながら言う瀬良さんに、美香が「ああ、そっか」と笑顔を向ける。
「大手だよねー。瀬良、その顔で将来有望とか、どれだけモテ要素集めたら気が済むの? 他の男子から嫌われてるでしょ」
「いやいや、職場に関しては俺の努力の結果だし」
「で、そんな瀬良の今の彼女ってどんな子なの? やっぱりレベル高いんでしょ?」
美香が聞くと、瑞恵も「あ、私も気になる」と身を乗り出す。
ふたりにロックオンされた瀬良さんは、「実はいないんだよね」と笑った。
「あれ。そうなの? ちょうど切れちゃったタイミング?」
「そうでもないかなぁ。俺、見た目で誤解されるけど、そんな遊びの恋愛するタイプでもないし、誰でもいいわけでもないから。でもまぁ……気になる子ならいるんだけど」
チラッと一瞬だけ視線をよこされ眉を寄せた。
そんな私を見て、わずかに口の端を上げた瀬良さんに、美香が「へぇ、そうなんだー」とうなずく。
瑞恵も同じようにしていたけれど、すぐに思い出したように私を振り向いた。
「そういえば千絵、大学の頃、彼氏いたよね? あの、すっごく真面目そうなひと」
急に矛先を向けられ、ギクッとしながら「ああ……うん」と答える。
そういえば、前々回の同窓会でそんな話になったかもしれない。
「えー、聞いてないんだけど」と目を輝かせて聞いてくる美香に、苦笑いを浮かべながら謝っていると、瑞恵が聞く。