ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
Reina's eye ケース9:我慢できない我儘
【Reina's eye ケース9:我慢できない我儘】
名古屋南桜総合病院の産婦人科外来診察室。
ここでもうすぐ妊娠9ヶ月になる私は
主治医の日詠先生から突然の宣告を受けた。
あまりにも突然で私は返事すらできず、頭の中は真っ白。
日詠先生が何を言ってるのか理解できなかった。
『日詠・・せんせい?今、なんて言った?』
私は自分が何か聞き間違えたかと思い、もう一度彼の言葉を聞く。
「君は、東京医科薬科大学病院に転院・・・転院したほうがいい。」
日詠先生は目を閉じてその言葉を言った。
なんで・・・?
あと1ヶ月じゃない
出産まであと1ヶ月
ここは名古屋だよ
お医者さんだっていっぱいいる
病院だっていっぱいある
そしてなによりも
日詠先生は神の手を持っているんでしょ?
どんなに私の状態が悪くても
その手で・・私とお腹の中の赤ちゃんを助けてくれるんでしょ?
全く訳がわからない私は日詠先生が発したその一言で
自分が彼に見放されたような気持ちになる
ここ最近は何も思い当たるような事がないのに
自分が彼に対して何か悪い事をしてしまったのではないかと自らに対して疑いの目を持ってしまうほど
『私、イヤです・・・日詠先生に・・・日詠先生にこのまま診てもらいたいです!!!』
感情が高ぶった私は身体を前傾させ、彼の両腕につかまり、彼の白衣の袖を強く引っ張った。
『私、ちゃんとするから・・・もう無茶なこと、しないから・・・だから・・』
私は駄々をこねている小さな子供みたいに彼にすがる。
そんな私をじっと見つめながらも、彼は首を横に振っていた。