ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋


私は ”これから頑張るぞ” と気合いを入れる為に自分の太ももを自分の両手でパンッと叩いた。
私のその突然の行動に驚いたのか、それとも、一緒に頑張ろうと励ましてくれたのか、お腹の中の赤ちゃんが私のお腹を強く蹴った。

赤ちゃんが・・・私を応援してくれているみたいで心強かった。



「伶菜ちゃん、コレ、持っていって!東京へ行っても伶菜ちゃんは決してひとりぼっちじゃないからね・・・・」

福本さんは薬の入った袋と一緒に小さい白い袋を私に渡してくれた。
その袋を開けてみるとそこには、安産お守りと小さい子供お守りが入っていた。

福本さんの気持ちがこもっているそのお守りを手にした私は
強くなるためにもう泣かないって決めたのに
その決意はあっけなく崩れ去り、福本さんに寄り掛かって涙を流してしまった。

真里と同じようにひとりぼっちじゃないと言ってくれた福本さんの気持ちが
本当に嬉しくて
本当に心強かった。



今まで、男に捨てられるまでは順調に生きてきたと思っていたけど
こんなにも他人のあったかさを感じたコトはなかった

もし、あの時・・・・
私が自ら命を絶とうとしたのを日詠先生が止めてくれなかったら
私は人の本当の温かさを知らずにお父さん、お母さんのもとへ逝っていた。

私と赤ちゃんを何度でもなんとしてでも助けてくれるって言ってくれた日詠先生に転院を勧められて
凄く不安で、凄く寂しい気持ちになっているけど
日詠先生に・・感謝しなきゃいけないね


私は奥野先生や福本さんの力を借りながら
ゴチャゴチャになってしまった自分の頭の中をなんとか整頓し、自分ひとりでも赤ちゃんを産もうという前向きな気持ちを抱くことができた。

そして私は

『日詠先生・・・本当にありがとうございました。』

日詠先生に再び会うことなく、病院を後にした。




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