ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋


「伶菜、大丈夫?一人なんでしょ?」

『うん、この子も一緒だから・・・』

私は自分のお腹をさすりながら、今度こそ心配をかけないように今日一番の明るい声で真里にそう答えた。


「よーし!東京なんて、新幹線乗ればすぐだもんね!この真里様がすぐに駆けつけてやるから心配いらないよ!!さ、新幹線の ”のぞみ” の時刻表、調べなきゃ!”こだま”じゃ、時間かかって仕方ないからさ!」

真里の声もテンションが高くなっていて。



『まーりー。大丈夫だよ・・・私、もう無茶なことしないから。』

受話器の向こうから真里がついた大きな息継ぎらしき音が聴こえてきた。


「本当だね?本当に死なないよね?赤ちゃんのコト、心配で、不安でしょ?私にできるコトは何でもするから・・・・・遠慮なしで言ってよ!遠慮なしだからね!遠慮なんかしたりしたら・・・伶菜のコト、見放しちゃうからね。」


真里から発せられた ”見放しちゃう” という言葉
それは自分のコトを大切に想っていてくれていた日詠先生に見放されてしまった私にとって、
核心をつくキツイ一言

そして

大切な親友を失いたくない私にとって
真里の言うことを聞かざるを得ない
説得力のある一言



『見放しちゃう?! 真里、それ、キツイな~。』

「わかっていればいいのよ。」

『だから、ちゃんと遠慮しないで言わせてもらうよ。』

今度こそ本当に真里に心配かけないように穏やかな声で私はそう言った。


「よーし!伶菜!東京、行ってこい!!!」


その瞬間、新幹線のドアが開いた。


『真里・・・東京駅、着いたんだけど・・・』

「もう着いたの?たった今、東京に行ってこいって言ったばっかりなのに・・・」

2人は携帯電話を介して・・大きな声で笑い合った。


やっぱり真里は今回も私の背中を
見えない手でグイっと押してくれた

優しくて、力強い、その見えない手で・・・
前に進みな・・と


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