ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
Hiei's eye カルテ15:ダメな俺を突き動かしている人


【Hiei's eye カルテ15:ダメな俺を突き動かしている人】


東京医科薬科大学病院を後にした時刻。
午前4時前。


「はい、産婦人科奥野です。」

『日詠です。』

「あら、日詠くん。こんな早朝から何か?」

『早朝からすみません。奥野さんにお願いがあるのですが。』



空が明るくなり始めた海老名サービスエリアで携帯電話を耳に当てた時刻。
麻の午前5時半すぎ。


「何よ、珍しいじゃない・・・あっ、最近では珍しくない・・か。こんなこと、ちょっと前にもあったわよね。伶菜ちゃんを一緒に診てほしいとか。」

『・・・・・・・』


こういうの、女の第六感とでもいうのだろうか?
いや、俺と奥野さんは恋愛関係にはないから、そうとは言わないだろうが
でも、奥野さんの鼻が利くのは確かかもしれない


「で、何?あたし、夜中に検診未受診妊婦の緊急搬送を受けたから、ロクに寝てないのよね~。だからそのお願いも内容によってはお断りするかも。」


妊婦検診を受けていない妊婦さんの緊急搬送はなかなか厄介だったりする
妊娠開始からの経過を把握していない状態のため、それを把握する手間が増え、処置するまでにも時間を要する
できるだけそういう妊婦さんを減らすのも俺達の仕事だが、なかなか減らないのが現状だ

でも、今は未受診妊婦問題を悠長に取り上げている場合じゃない



『今朝、どうしても勤務開始時間に間に合わないんです。』

「何?悪い女にでも捕まった?」


今日の奥野さんは辛辣だ
余程、夜中の緊急搬送で手間取ったんだな

でも、奥野さんぐらいしか頼れる人がいない
どれだけ辛辣な言葉を並べられても、お願いするしかないんだ



『・・・俺、今、海老名なんです。」

「海老名~?! 海老名って・・・東京の?」

『神奈川県です。』

「そうだっけ?」


しまった
お願いする立場なのに、つい指摘とかしてしまった



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