ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
Reina's eye ケース17:長い一日の始まり



【Reina's eye ケース17:長い一日のはじまり】




出産した日から1ヶ月。
順調に体重が増えた祐希は心臓の手術を受けることになった。

そして迎えた祐希の手術当日。
私の帝王切開当日と同様に小児心臓外科医である東京の日詠先生が私達のもとに現れた。


「とうとうだね。」

『はい。』

「体重を増やす・・・手術に耐えられるだけの体にしてあげるという一つ目の山を越えたね。」

『・・・はい。』


母乳を与え体重を増やしてあげるという祐希のために自分がしてあげられたことが
無事に手術に至るという結果に繋がり、ひとまずほっとした。


「じゃあ、今度は二つ目の山だ。手術についての説明をさせてもらってもいいかな?」

『お願いします。』


手術方法の説明、手術の危険性の説明、起こりうる合併症の説明、手術同意書の説明・・・どれも丁寧にわかりやすく説明してゆく日詠先生。

そして


「祐希君の手術・・・全力を尽くします。」


いつもの優しく語りかけるような口ぶりではなく、引き締まった口調でその言葉を私へ投げかけた先生は祐希を子供用の小さなストレッチャーに乗せて、私の目の前から祐希とともに手術室のほうへ消えて行った。


『手術室、行っちゃった・・・』


今から数時間後
祐希はちゃんと私のところに還ってくるのかな?

お願い
ちゃんと還ってきて
ちゃんと私のところへ・・・・・・


私は  ”your baby”  の文字が刻印されたあのジグソーパズルを右手に握り締めたまま、心の中で何度もそう願いながら小さなストレッチャーに乗せて連れていかれた祐希の姿を何度も頭の中で想い出していた。



『代わってあげたい。私が。』


心の底からそう想う
親になるってこんなに大変で、こんなに切ない想いをすることもあるんだ
そんなこと、今まで知らなかった・・・・


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