ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
私は手術後に祐希が戻ってくる予定の集中治療室近くの待合室に移動した。
偶然にも誰もいない待合室。
あまりにも静かすぎて、少しでも気を紛らわせようと思いTVをつけた。
いつも観ているワイドショー番組。
けれども、今はそれを見ている余裕なんてなくて。
祐希がちゃんと私のところに
生きて還ってきてくれるかばかり気にしていた。
手術が始まって2時間。
売店で買っておいたサンドイッチの袋を開け齧りつくも、ふた口目を口にする気分にはなれなかった。
手術が始まって5時間。
疲れを感じ、上半身だけベンチに横になってみたけれど、落ち着かずにすぐに座り直した。
手術が始まって・・・8時間。
待合室の時計の針が本当に正しい時刻を指しているのかを携帯電話の時刻表示と照らし合わせて確認した。
どれだけ待っていても私の元に還って来ない祐希
手術室の中でどのようなことが行われているかわからない状況
私は待合室の中で一人俯きながら押し潰されそうな空気と闘っていた。
私はどれだけ待っていればいいの?
どれだけ
いつまで
どこまで
待っていればいいんだろう?
正直、もう待てないかも
東京の日詠先生も、
祐希は合併症もあるから非常に難しい手術になるって言ってた
でも、手術しないと命を繋ぐことは難しいとも
生きて欲しい一心で手術を受けることにした
東京の日詠先生は名医だ、手術室からちゃんと生きて還ってきてくれると、入院中のお子さんのお母さん達から何度も聞いた
だから祐希の手術もきっと上手くいくって信じて
だから諦めちゃいけないけれど
予定していた手術時間を大幅に超えてしまっている今、
もうダメかもしれない・・・・・
祐希も、私も
もうダメかも・・・・
ダメだ・・・きっと・・・
そう思った瞬間だった。
「コレ・・・飲むか?」