ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋



そんな中、

「日詠、、先生?」

伶菜が突然、顔を上げた。
しばらく泣き続けたせいか、少しスッキリとしているようにも見える。



『ん?何?』

それに安心したせいか彼女を抱きかかえていた自分の両腕の力が反射的に緩んだ。



「先生、こんなに遠いところまで来ちゃって、お仕事の方、大丈夫なんですか?・・・それになんで今日、祐希の手術日だってわかったんですか?」

『ああ、大丈夫だよ・・・』

「でも、先生、寝る時間もないぐらい忙しいんじゃ・・・」



俺の心配している場合じゃないだろ
でも、彼女らしいよな
自分のほうが大変な境遇にあるのに、他人の心配をしてしまうところは・・・


だからちゃんと言っておかなきゃな

『大丈夫だ。今日が手術日だってわかったのは、ここの病院からウチの病院に経過報告のメールが届いてたから。』

彼女が俺なんかに気を遣わなくてもいいように



『仕事は・・今日も勤務日だったんだけど・・・奥野先生が明日彼氏とデートに行きたいから勤務を今日と代われってうるさくてさ。それで急遽、休みになったんだ。」

「えっ?!」

彼女の驚いた顔を垣間見た俺は、言い訳じみた話をしている自分がなんだかかっこ悪く思えた。



「でも先生、昨日仕事してたんでしょ?』

『・・・ああ』

「何時まで・・・ですか?」

『今朝の10時まで・・・かな?』



今日も勤務日だったとか余計な一言だったよな
更に気を遣わせちゃってる

何、やっているんだか、俺って、
何度、そうやって自分に溜息をついてるんだ?



『・・・・・・・・・』


気を遣ってくれている伶菜もさすがにあきれるだろう
夜勤明けに高速道路を駆け抜けてきた俺にマグカップを差し出されては・・・

でも、俺が今回は戸惑うことなく走り続けた理由は
たったひとつ


『顔が、見たくなったんだ・・・・・』


コレだ


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