ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
どう反応していいのかわからない私。
でもそれは、その言葉を口にした日詠先生も同じようだった。
日詠先生は一体どんな気持ちでここまで来てくれたんだろう?
主治医として心配だった?
それとも
私の兄として心配だった?
それを聴きたいけれど、聴いてもいいものかどうか迷っている時だった。
何かがこちらに近付いてくる音がする。
NICU(新生児集中治療室)で聞いたことのある一定のリズムを奏でる電子音も。
そして
『手術、終わったんだ・・・・』
しばらく黙ったままだった日詠先生の呟く声も聴こえた。
それらの音や声のおかげでずっと待ち続けた祐希がどうなったのかを再び気にかけた私は家族待合室を飛び出し、近付いてくる音のほうへ足を向けた。
襟元に汗が浸み込んだ手術着を身に纏った7~8人のお医者さん達が小さめの寝台を取り囲みながら、こっちに近付いてきている。
医療ドラマの中にでも出てきそうなそんな光景。
遠目でなんとなく感じる。
彼らのやり切ったという雰囲気を。
祐希?
祐希・・?
助かった?
助かったの・・・?
祐希・・・・
そして、その小さな寝台と医師達は私の前で止まった。
私は右手に握ったままだった、たった1ピースの空色のジグソーパズルを力強く握り締めながら、恐る恐るその小さな寝台の中を覗き込んだ。