ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
Reina's eye ケース18:彼が無茶をする理由


【Reina's eye ケース18:彼が無茶をする理由】



手術が始まってからずっとひとりきりだった家族待合室。
手術からなかなか戻ってこない祐希を心配するあまり、今にも潰れそうになっていた私を支えてくれたのは、突然現れた名古屋の日詠先生だった。

体勢が崩れそうになった私を抱きしめてくれている彼の体温。
自分が入院中に背中から抱きしめられた格好になった時には、ドキドキが止まらなかった。

でも今は、潰されそうになっていた自分の心を軽くしてくれている。
そうやって軽くなった心は、逆にいつも忙しい日詠先生のことが気になった。


『先生、こんなに遠いところまで来ちゃって、お仕事の方、大丈夫なんですか・・・?それになんで今日、祐希の手術日だってわかったんですか?』


早速、矢継ぎ早に質問攻め。
そんな私に大丈夫だを繰り返す日詠先生。

昨晩は何時まで勤務していたかなど具体的な質問を投げかけるとようやく大丈夫以外の言葉を言ってくれる。

その中でわかった事実。
それは、今朝まで病院で働いていて、眠ることなく、その足でここまで来たということ。


なんでそこまでするの?と驚いている私の耳に滑り込んできたのは

「顔が、見たくなったんだ・・・・・」

少しはにかみながらそう呟く日詠先生の言葉。


本当にこの人が日詠先生なの?と疑ってしまうような
自分が勝手に創り上げた虚像かと思ってしまうような
そんな彼の言葉だった。


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