ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
まるで待合室の前で聞き耳を立てていたかのような絶妙のタイミングで聴こえてきたドアをノックする音。
私と日詠先生は同時にその音がする方へ顔を向けた。
『ハ、、イ。』
急に自分が祐希を待っていた事を思い出し、慎重に返事をした私。
ついさっきまで日詠先生と話をしている時とは異なる緊張感が私を襲う。
ガチャ!
「失礼します。高梨さん、祐希クンの面会の準備ができました。どうぞ、こちらへ。」
早く来いと言わんばかりにそう言いながら看護師さんはドアを開けた格好のまま立っている。
『えっと、あっ、ハイ。』
さっきの日詠先生の言葉の続きを聞きたいけれど、祐希の様子も心配だし
どうしよう・・・・・
「ベビーに会いに行っておいで。きっとキミが来るの待ってるから・・・」
身動きが取れなくなっていた私に日詠先生は穏やかな口調で声をかけてくれた。
『スミマセン。行ってきます。』
看護師さんが現れた事によって、祐希のことを考えなくてはと・・急に生じてしまった緊張感で顔がこわばっていた私。
せめて日詠先生に心配をかけないようにと自分が出せる精一杯の笑顔を見せながら彼に会釈をし、祐希が待つ集中治療室へ急いで向かった。
祐希のことで心身ともに再びバタバタし始めた私は
日詠先生が口にした ”親父の抱えていた信念” という言葉に
私の知らなかった ”私自身に関する過去の真実” が隠されていたなんて
それもこの時には全く知る由もなかった。