ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋



「この値段なら、まだ若いカップルでも気軽に住めそうですね~」

「そうなんです。駅も近いからお出かけも気軽にできちゃいますよ♪」


相変わらず声のトーンが高めな情報番組が流れるTVのある家族待合室。
そこで、俺は伶菜が息子を抱えて名古屋での生活をどうするのかについて思いを巡らせていた。


それだけでなく

『俺は・・・』

『どうするんだ?』

『お節介・・・だよな、きっと。』

俺はどうするのかということまで、勝手に思いを巡らせていた。



そんなことをしているうちに伶菜がICUでの面会を終えてこちらへ戻って来た。
彼女の気配は感じるのになかなか声をかけて貰えない。


『ベビー・・・どうだった?』

自分から声をかけてみる。
驚いた顔をして俺が眠っているかと思ったとこぼす伶菜に、遠慮しすぎだろ?とつい笑ってしまう。


彼女の息子・・・祐希君は順調そのものらしい
俺が妊娠中の伶菜を診察してから今まで、彼のこともずっと心配だった


『そっか、良かったな・・・ホント・・・良かった。』

だから、祐希君が無事に伶菜のもとへ戻って来たこと
それによって伶菜がようやく心の底から嬉しそうな顔を見せてくれたこと
本当に良かったと思う



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