ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
Hiei's eye カルテ25:彼女が傍にいること


【Hiei's eye カルテ25:彼女が傍にいること】



東京から名古屋に戻ってきたばかりの俺達が直行した場所。
それは伶菜の自宅。
その廊下を彼女と祐希そして俺の3人で歩く。

重そうな足取りの彼女
まだ産後2ヶ月程度

出産後も病院敷地内にある入院患者家族用滞在施設から病棟へ毎日休みなく通っていたらしい
その日常から打って変わって、今日は東京からの移動
さすがに疲れたか?

そう思いながら彼女を見守る俺も少し足取りが重い。
その理由は、体力的なものではなく、
杉浦さんから敷かれたままの箝口令の内容がをもう間もなく伶菜が知ることになるから。


そうしているうちにお互いに重い足取りだった足が止まる。
伶菜の部屋の前。
彼女は足だけでなく、施錠を開ける手つきもゆっくりだ。


この先のことがわかっているだけに
もうこのまま俺の家に連れて帰ってやりたい

せっかく一緒に暮らしたいって言ってくれたんだ
それが覆ってしまうようなことにもなって欲しくない

そんなことを思っているうちにとうとう開けられた玄関のドア。


「・・・・・・・・・」


生活感のない部屋を目の当たりにして、あんぐりと口を開けて俺を捜す伶菜。
何がなんだかわからないという顔で俺に答えを求めようとしている。
こんな時だが、そういう伶菜の態度、それが不謹慎にも俺のツボに入る。


「伶菜へ・・・おかえり。荷物は既に運んであるから。詳しくはすぐ傍にいる人に聞いて。真里」



”伶菜は押して、押して、押し捲れ” と俺にけしかけた杉浦さんの手紙をたどたどしく読み上げる伶菜。

明らかに困っている横顔を自分がどうにかしてやらないと・・と思ってしまった俺。


ようやく覚悟を決めた。
その彼女を何がなんでも自分の家に連れて帰ろう・・・と。


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