ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋



「やっぱりいいよな、ベビーの寝顔って・・・毎日、病院で見てるけど、こういうプライベートな空間で見るほうが断然可愛く見えるよな・・・・」

祐希の頭を優しく撫でながら日詠先生はそう呟き、フゥッと息をついた。


先生のその言葉を耳にした私はもしかしたら日詠先生が
彼の目線を私の目線の高さに合わせてくれている事を喜んでいいのかもと思い、先生のその言葉に笑って頷く。


「あっ、キミも風呂、冷めないうちに入るといい・・・俺、先に入っちゃってゴメンな。さて、祐希も寝た事だし、そろそろ・・・」

『えっ、そろそろ・・・何ですか?』


今度こそ、何かあるの?


「あっ、俺、そろそろ出勤の時間だから。」


えぇっ―――今から出勤???
だって今日、東京から帰って来たばかりだよ

っていうか、そういえば先生、物凄く忙しい人だったコトすっかり忘れてた


『先生、スミマセンッ!!少しでも眠ってもらえばよかったのに。』

私は必死に頭を下げた。


「そんな・・・頭、上げてくれ。」

『でも・・・』

「俺、キミ達に充電させてもらったから・・・それに病院でも仮眠できる時間あるから、そんなに気にするな。それに今からそんなに気を遣ってたら身が持たないぞ!!!あっ、そうだ。コレ、預けておくから・・・・」

『・・・・・・・・・・』


先生の ”預けておくから” の一言で勢いよく頭を上げた私に、彼はグーに握った右手を差し出しニコッと笑った。


『コレ、何ですか?』

「何だと思う?」

そう言いながら日詠先生は少年のような笑顔を覗かせる。


手のひらに収まるもの
私、ついさっきもそうだけど、いつもすごーく勘違いな妄想を抱いてしまうから
変なコトは考えずに・・・

無難なセンで、お金かな?
それじゃあまりにもつまんないし


預けておくって言ったから先生がいない時に使うモノかな?
だとするとアレかな・・・・?


『認印ですよね!!宅配とか来た時に荷物が受け取れるように!』

珍しく現実離れしていない事を想像していた私は自信あり気にそう答える。





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