ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋


そして、奥野先生と私は医局前でふたりきりに。
日詠先生のコトを好きと言った奥野先生と何を話していいのか戸惑っていた私は祐希が乗っているベビーカーの日よけ用幌を畳み、彼を抱き上げた。


「伶菜ちゃん?」

『・・・あっ、は、ハイ』

声かけられちゃったけど、何、話せばいいんだろう?


偶然、奥野先生の日詠先生に対する想いを耳にしてしまった私は
どう反応すればいいのかな?

もし、日詠先生の大切な人が奥野先生であるならば
”私、彼の傍から離れるコトできます”・・かな?


もし日詠先生の大切な人が奥野先生なら
自分の母親の病院の利益の為に日詠先生と結婚するのが手っ取り早いと言っていた三宅さんとは違って
奥野先生は日詠先生のコトを大切にしてくれそう


だから
ニッコリ笑って奥野先生にそう言える
”私は日詠先生の傍からちゃんと離れられる”・・と・・・


「ゴメンナサイね・・・ウチの職員がアナタにあんな失礼な事を申し上げてしまって。」

奥野先生はさっきまでの毅然とした口調から一転し、申し訳なさそうに私の声をかけ、深々と頭を下げた。


『いえ、そんな・・・お弁当を届けるためだとはいえ、私が関係者以外立ち入り禁止区域に入ってしまったから。』

私はそんなことないと胸の前で両手を小刻みに振りながら必死に言葉を返す。


「そんな、アナタは関係者以外なんかじゃないわよ・・日詠クンの家族だもの・・」

『・・・・・・・・』

奥野先生の ”日詠クンの家族” という言葉にズキリと胸が痛んだ。

私が日詠先生の傍にいられるのは、家族だからだと
改めて痛感させられたから。



「それに、日詠クンね、半年くらい前から仕事がどんなに忙しくてもすごく充実した顔をするようになったの・・・それまではただ仕事に追われてしまっている感じだったのにね・・」

『充実した顔・・・?』

「そうよ。そう変わったきっかけは、きっとこのお弁当にもこめられているのかな・・・」


奥野先生は柔らかい表情でそう言いながら、両手を私に向かって差し出し、お弁当をその上へ乗せるように促した。
私は引き寄せられるようにその手に持っていたお弁当を載せる。



「コレ、彼のデスクの上に置いておくわね・・じゃ、またね。」

奥野先生は私が手渡したお弁当を右手の手のひらの上に載せたままそう言いながら微笑んだ後、私に背を向け医局の中の方へ歩き始めた。


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