ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋



目が逸らせない
きっと私が彼のその問いかけにちゃんと答えるまで
目を逸らさせてはくれない

メールを送信するのが早すぎたなんて嘘すらつかさせてくれない


『・・・・私があのメールを送ったのは、先生に顔を合わせ辛かったから・・・』


これ以上、自分の心の中に隠しておくことができないと思った私は目を逸らさずに正直に答えた。

でも、先に日詠先生が視線を外し、俯いた。


そして、再び聞こえてきたのは

「昨日の夜、俺があんなコト・・・したからか・・・・?」

いつもよりももっと低い声でそう呟いた日詠先生の声だった。

再び日詠先生と視線が絡む。
凄く真っ直ぐに見つめてくるその視線。



彼が言う ”あんなコト” が背後から私を抱きしめたコトなら彼の言う通りだけど、すんなりとは肯定できない

肯定なんかしたら、なんでそんなコトしたのかを聴きたくなってしまうから

でも、日詠先生に対する奥野先生の想いや三宅さんの願望を
偶然にも知ってしまった私はなんとなくその理由を耳にしてはいけない気がするから


『・・・・・・・・・・』


やっぱり言葉を発することができない
折角、いつもの雰囲気に戻ったっていうのに
また顔を合わせ辛くなっちゃうよ



「気まぐれなんかじゃない・・・・」

『えっ・・・?!』

彼の低く落ち着いた声を耳にした私は背筋に電気が走ったような感覚を覚えた。



気まぐれじゃないって
そうじゃなかったら、何?

妊婦だった頃、ナースステーションの前でもこういうことあった
その時みたいに、ただ眠かっただけ??
もしそうでもなかったら何???


『・・・・・気まぐれ・・・じゃなかったら、何?』

ずっと聴きたくても聴けなかった
”彼が自分を抱きしめた理由” をとうとう彼に問いかけてしまった私は
緊張のあまりに必要以上の瞬きをし続けてしまう。

それでも、もう聴かずにはいられない・・・・
彼の
日詠先生の本心が知りたいから・・・・・

でも、彼の想いとかを
あまり耳にしたことがない

こうやって聴いてしまったことは
もしかしたら、彼を困らせてる?

彼と一緒に暮らしてこんなに良くしてもらっているのに、困らせるとか
ワタシ、何、やってるんだろう?




「だから・・・今後、何があっても、自分の居場所を見失うなよ・・・お前の居場所はココなんだから・・・・」



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