ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
Hiei's eye カルテ32:伝えられない感情


【Hiei's eye カルテ32:伝えられない感情】



『あっ、ハイ。お弁当届けに医局に行った時に。奥野先生、お弁当を先生に手渡してくれたんですね?』


伶菜が祐希の定期健診でウチの病院に来た日。
昼間、病院で奥野さんに会ったかと尋ねた俺に、特に動揺することなく、そう答えてくれた彼女。

自分を早退させてくれた奥野さんと伶菜の間に何があったのかを知りたくて、その旨を伶菜に尋ねると、彼女の表情はあっという間に強張ったように見えた。
そこに焦りの色も加わって見える。

それでも俺はじっと彼女の返答を待っていると


「奥野先生に助けられたんです・・・・あっ!!!!」


彼女は俺が疑問に思っていることのひとつについての糸口になるそうなことを口にした。

しまったと更に焦りの色を隠せない彼女。
重要なことが隠れていると思った。

また伶菜との間に妙な空気が流れるかもしれないと思ったが、その空気の戻し方がなんとなくわかった俺は


「何があったんだ?奥野さんもなんだか様子が変だったし、伶菜もあんなメールを送ってきたり・・そもそもなんであんなメール送ってきたんだ?」

俺は彼女の心の動きを見逃さないように集中するために、ひとつ大きな溜息をついてから、病院から持ち帰ってきたままだった疑問を彼女に投げかけた。

彼女の瞳の奥を覗く
視線は外していない


でも

「・・・・私があのメールを送ったのは、先生に顔を合わせ辛かったから・・・」

かすかにその瞳が揺れたのを俺は見逃さなかった。
やっぱり自分のせいで、彼女を動揺させてしまったという申し訳なさから、自ら視線を外す。

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