ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
「ほらほら、伶菜さん、シフォンケーキ来たよ。ホイップクリーム追加してあげようか?」
このふたりの関係性を考え込んでいた私の頭の中を割って入るように入江さんが運ばれてきたシフォンケーキを手渡してくれようとしている。
『あっ、ハイ!』
なんか入江さん、ジェントルマンだな~
こんなにカッコイイ人にさり気なく優しくされると
優しくされた女の方がほっとかないよね?
「伶菜、お前、ホイップこれぐらいのほうがいいだろ?甘いのスキだから・・・」
私の目の前に置かれたダージリンティーシフォンケーキにどっさりとホイップクリームを載せてくれたのは、ホイップ追加を提案してくれた入江さんではなく
まさかの・・・日詠先生。
ああ、日詠先生ってば
こんなにいっぱいホイップ載せちゃって・・
私、授乳中だからこんなにたくさん生クリーム食べると、乳腺炎になっちゃうんだけどなぁ
しかも、乳腺炎を予防するように指導する立場の産科医師がこんなコトする?
『・・・・・・・』
「・・・・・・・」
日詠先生がどっさりのホイップクリームを搾り出す姿をじっと眺めていた入江さんと私は揃って言葉を失っていたけれど、突然、入江さんが笑いを堪えきれずに私達に背を向けてしまった。
「笑うなって。」
「わかった、わかったから・・・」
日詠先生に横目で睨まれながら名前を呼ばれた入江さんは” わかった” を連呼していたけれど、私はというと、何がなんだかさっぱりわからず、むしろどっさりと載せられたホイップクリームを食べるかどうしようかのほうに気を取られていた。
なんか、入江さんと日詠先生って、兄弟みたい
きっと、日詠先生、入江さんには心を許しているところがあるんだよね
入江さん、いろいろと話を聞いてくれそうだし
なんといってもオトナの余裕が漂ってる感じがするしね
「そういえば、これ、伶菜さんにお土産。」
シフォンケーキにフォークを突き刺そうとしていた私に入江さんはさっき遠目で見かけた紙袋を見せてくれる。