ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
自宅に到着してからは、俺と伶菜は夕飯の準備に取り掛かり、入江さんには俺の部屋でデータ処理方法の適正確認をしてもらった。
その後、データ作業が終わったらしい入江さんも夕飯作りに合流。
餃子をフライパンに円形になるように並べながら焼く彼。
更に、焼き上がった餃子の真ん中に茹でたもやしを添え、「これで浜松餃子完成!」と声を挙げた。
「美味しそう~!!! 温かいうちに食べましょ♪」
焼き方を彼の傍で見届けた伶菜が夕飯開始を誘い、みんなで乾杯をした。
「餃子、パリパリでおいしいです。お店で食べてるみたい!」
「そう言ってもらえると嬉しいな。」
ビールのプルタブを開ける入江さんは嬉しそうな顔を隠せていない。
彼も人に手料理をご馳走するのが好きな人。
だから誉め言葉はやはり嬉しいようだ。
「祐希も離乳食、食べようね♪」
伶菜は祐希も食べさせながら、食卓に並んだおかずにも少しずつだが上手に手を伸ばせている。
「祐希も、おかず食べよう~!! たまごだよ~♪ はい、あ~ん。」
離乳食を食べている祐希も表情がいい。
おそらく一緒に食べているという感覚が彼にいい影響を与えているのだろう。
祐希を食べさせながら彼女も食べる。
ここ数ヶ月で彼女が覚えた母親の技だ。
「彼女、いいお母さんしてるんだな。」
『ええ、頑張っていますよ。』
入江さんの誉め言葉を耳にした俺は新潟産の日本酒の瓶の蓋を開けながら緩んでしまいそうな口元を引き締めた。
偶然、そのタイミングで腹いっぱいで眠くなったらしい祐希を伶菜が抱き上げ、寝かしつけてくると言い残し寝室のほうへ行ってしまった。
「お前もいいパパしてるみたいだしな。」
『・・・いいパパ・・か。』
「あ~、伶菜さん、妹だっけ?」
伶菜のいなくなった今。
入江さんの ”妹だっけ?” という問いかけから、彼が聞きたかったらしい事柄に触れ始めようとしていることがはっきりとわかった。