ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
そういえばさっき、名古屋駅構内を移動中
伶菜が俺の妹だって言ったことについて入江さんが後で聞くって言ってたっけ
今、ここでこう来るとは思ってなかったな
『・・・そうです。妹。』
「妹いたんだな・・・しかもずっと想い続けてた人が妹だったとは。いろんな女が声をかけてきても本気にならないわけだ。」
『そうでしたっけ?』
どう考えても分が悪い流れになりそうな俺はわざと日本酒を自分から煽るように飲む。
空になったお猪口に入江さんが気を利かせて日本酒を注いでくれる。
「バイトで一緒だった京子ちゃんだっけ・・・彼女も相談に来たぞ。日詠くんは優しくてカッコいいのに隙がなくて、付き合ってって言えない・・って。」
『そんなことあったんだ。』
「俺はお前がどの女の子に対しても本気になれない理由がわかっていたからな。敢えて京子ちゃんの告白したいという気持ちを煽ることはしなかった。お前が学生の頃、大切な人がいるとこぼしたことを覚えていたから。」
『そんなこと、こぼしましたっけ?』
寝不足状態だったせいもあってか、早々に酔いが回り始めた俺はそんなことを入江さんの前でこぼしたことがあったか想い出そうとする。
でも酔っ払いになりかけている俺よりも先に入江さんは
「お前のずっと想い続けていた大切な人って・・・伶菜さんだったんだろ?」
俺よりも先に想い出してしまったようだった。
酔いが結構回ってきていた俺。
気心知れた入江さんの前で自分の気持ちを制御することなんて難しくなってきていた俺。
大切な人が伶菜だったことを肯定も否定もしないまま
『・・・スキという言葉って・・・言うの、こんなにも難しいんですね。』
「日詠?!」
『俺、そんなこと、知りませんでした。』
「お前・・・」
『許されないんだよな・・・スキって言葉、口にするの。今・・・いや、これからも俺はぁ~さ~許され・・・』
「日詠、って、オイ!・・・お~い~、ここで寝ると風邪ひくぞ。」
肩を揺すられて目を開けようとしても瞼がしっかりと開けられない俺は自分でどうすることもできないまま意識を手放した。