ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
「そういえば、日詠クンがウチに搬送した新患、どう?」
『情報、早いですね・・・今のところは落ち着いたんですが、奥野さんにお願いがあるんです。』
「なに?その新患の主治医、あたしが引き受ける?」
『それなんですが・・・・』
新患=伶菜 の主治医はこのまま自分がやりたい
けれども、伶菜の立場を考えると内診は奥野さんにお願いしたい
こんなことをお願いしてもいいのだろうか?
『内診を・・・・』
「内診?」
本当なら主治医を交代したもらうのが適切なはず
でももし、奥野さんに伶菜の主治医を担ってもらうことになったら
伶菜との接点は確実に減るだろう
伶菜と俺
今現在の接点は 患者と主治医の関係しかない
今、この関係を手放したら、
彼女が見つからなかった元の生活に戻ってしまう
『こんなお願いするのは間違っていると思ってます。でも俺じゃ無理みたいで・・・・』
「伶菜さんの内診だけをあたしにやって欲しい・・・そういうコトでしょ?ま~、どう考えても日詠クンがやるのは無理だわね。」
なんで俺が内診をするのは無理なのかわからない
新人だった頃ならまだしも、内診は普段から行っている診察方法の1つだ
それにわからないのはそれだけではない
『なんで伶菜のことを・・・?!』
「その問いかけに答えない代わりに内診だけ引き受けるわ。」
なぜ奥野さんが伶菜の存在を知っているのかも教えては貰えなかった。
『すみません。こんなことをお願いしてしまって。』
「ま~いろいろあるわね。内診の所見、丁寧に知らせるから任せて。」
それでも、俺にとって有難い取引。
『宜しくお願いします。』
「こちらこそ日詠クンを見て勉強させてもらうわ。」
奥野さんが俺から何を勉強させてもらおうとしているのかわからなかったが、彼女の厚意に俺は深く頭を下げた。