ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
「先生、凄い熱!!!!・・・・薬飲んだ?」
『まだ・・・』
勢い良く倒れこみそうになったところを伶菜が腕を引っ張ってくれておかげで大して体を酷くぶつけずに済んだ。
ただの疲れだと思っていたけれど
やっぱり熱があったんだな
「先生、何か食べてから薬飲んだほうがいいから・・・・取り敢えずちょっとベッドで横になってて。」
『ハイ・・・・』
高熱があることを自覚した俺はもはや自分でどうするのかを考える余裕なんかなくて、彼女に言われるがままフラフラしながらも自分の部屋へ向かった。
『ダメだ、もう動けない・・・』
着ていたコートすら脱がずにベッドにダイブする。
久しぶりに間近で伶菜の顔を見たせいなのか、ずっと気を張っていた自分の気持ちが緩んだ気がする。
明日のことなんか考えられないぐらい、頭もぼんやりしてウトウトしている時に、伶菜がやって来た気配を感じる。
その後に額の上に載せられた冷たいタオルの存在で、目を開けなくても彼女の存在をちゃんと感じる。
熱が出た時とかは、解熱剤で無理矢理下げて寝るだけという俺にとって、冷たいタオルを額に載せてもらうとかは新鮮。
額からじわじわ伝わる冷たい感覚がやけに気持ちよく感じる。
風邪ひいて、こんな風に看病して貰うのはいつぶりだろうか?
少なくとも大人になってからは、その記憶なんかない。
少し離れた場所から聞こえたカランという何かが金属に当たったような音によって、伶菜が部屋から出て行こうとしている気配を感じる。
こういう看病して貰えるという安心感が、その金属音に触発されて、甘えたいという感情に変わった俺は、部屋から出て行こうとする伶菜の腕を強く引いた。