ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋


でも、私はわかっていた


「伶菜さんに嘘をついたということは反省してます。でも、そうするしかなかった。その頃、彼女は仕事で着実にキャリアを積んでいた時期で、もし僕が転勤を彼女に告げていたら、彼女は仕事を辞めて僕と一緒に仙台へ行くと言いかねないと思ったんです。」

その程度の問い質しで彼が怯むことは一切なく、誰もが納得するような返答をちゃんと用意できる頭の良さを兼ね備えていることを・・




「彼女は有能な女性ですから、僕が社会人としての彼女の可能性を潰すようなことをしてはならない・・・そう思ったから、あんな嘘をついてしまったんです。」

『・・・・・・・・・・』

「でも、会社とは必ず名古屋に戻ってこれるという約束を交わして仙台に転勤することになった。だから、仙台での仕事を終え名古屋に戻ったら、伶菜と寄りを戻そう・・・そう思っていたんです。」


そんなことを彼が考えていたなんて、初めて知った

2年前の私は彼のコトが本当に好きで
彼は佐橋康大という人は私の全てだった

もし、2年前、彼の転勤の話を自分が耳にしていたら
おそらく彼が言う通り、勤務していた会社を辞めて、彼について仙台に行ったのは間違いないだろう

そんな私が彼を諦めるには、フラれるという形しかなかった
しかも酷いフラれ方しか・・・



「伶菜・・・一人で子供を産んで育てていたキミにはきっと辛い想いをさせたと思う。本当に申し訳なかった。でもこれからは俺も一緒にこの子を育てていくから・・・」


申し訳なさそうに謝り、そして力強く決意表明をする彼。


『・・・・・・・・・』



彼にフラれた2年前、私は夢をみているような感覚に陥った

だって、彼は私のコトを大事にしてくれていると思っていて
まさか私が彼にフラれる、捨てられるなんて思いも寄らなかったから・・
そして、今も、夢を見ているような・・・そんな感じ


だって、彼と付き合っていた頃は、何度も何度も
彼と彼との間にできた子供達と一緒に
ドライブに出かけたり、水遊びをしたり、お買い物をしたりっていう幸せな空想を
頭の中で何度を思い浮かべていたのに

彼にフラれた、捨てられた私には
もうそんなコトはできないと思っていたから






「だから、俺と結婚しよう・・・」



結婚・・?!


私はこの直後、驚き過ぎると自分の意思とは無関係に辿りついてしまう、夢か現実かわからない世界へ迷い込んだ。



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