ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋



『・・・いえ。』

「うわ~、これだからモテ男は困るんですよね~。彼女さん、どんな女性なのかな?・・・男としてのケジメ、つけないとね~。」


男としてのケジメか
それって、結婚しろってことだよな?


でも、それはできない
伶菜は妹という立場だから・・・


となると
伶菜もいつか結婚するのか?

それはあり得ないことなんてない


伶菜が結婚する
もしそうなったらどうなるんだ?


伶菜が結婚する時

それは
俺の前から居なくなる時だ




今の生活・・・伶菜達と一緒に過ごす生活

『弁当箱、洗っておかなきゃな・・・弁当箱に入れておくお菓子、今日は何にしようか。』

もうそれがあって当然と思ってしまうぐらい
その生活は俺の中ですっかり浸透してしまっている


『今日は早く帰れそうだから、夕飯は俺が作ろう。メールしておくか。』

でも、それは
兄と妹家族という関係の上で成り立っている曖昧な関係



「ナオフミくん、ちょっといい?」

『福本さん。急患ですか?』

「患者さんのことじゃなくて・・・・伶菜ちゃんが!!!!!」


曖昧な関係は、長くは続かない
そんなことはわかっているはずなのに
それから敢えて、目を背けていた


「あのね、さっき、食堂で気を失ったの。」

『・・・何だって?今、どこにいます?』

「外来の処置室・・・それでね。」


弁当を届けてくれて、
それでまだ病院内に居たのか?

どうしたんだ?
何があったんだ?


「今、寝ているんだけど、とうとう現れちゃったの。」

『はっ?何がですか?』

「・・・伶菜ちゃんの元カレ。」

『・・・・・・?!』


伶菜達と俺の今の生活がグラつくような事が起こることなんて
そんなことは敢えて考えないようにしていた

それを考えることで、それが現実になってしまうような気がしたからだ

でも、眉間にくっきりと皺を刻んだ福本さんを目の前にしている今、それを考えないようにすることは最早、不可能な状況だと感じた


「祐希くんと血が繋がっている父親が現れちゃったの・・・」


現実なんていらない

欲しいのは、ずっと捜し続けてようやく見つけた彼女達と過ごす、今の穏やかな生活だけ


「ナオフミくん?!」

『すみません、ちょっと行ってきます!』



それだけでいい

他には何もいらない

なのに、なんで上手くいかないんだろう?





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