ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋


『高梨さんに午後3時からエコー検査予定と伝えてくれる?』

「3時ですね?わかりました。」

翌日、早速俺は伶菜のエコー検査(超音波検査)予定を入れた。
昨日屋上で会った伶菜の穏やかな笑顔を目の当たりにして、もう大丈夫だろうと思えたから。

手術が思った以上に手間取り、伶菜を呼んだ検査室へ行くのが遅れた俺。
既に検査室内にいた伶菜。
予定時刻から遅れたことを謝ると、彼女は今来たばかりだからと自らベッドに横になった。


このまま検査を始めても大丈夫そうだとエコーのプローブを手に取り、彼女のほうを向くと、天井を見上げふうっと息をつく姿を見かけた。

胎内(母体の子宮の中)の様子を画像上で映し出され、胎児の成長が実感しやすいこの検査
やっぱりまだこの検査は早かったか?



『ダメそうならまた今度にするけど・・・どう?』


俺の顔をじっと見つめ顔を少し赤らめた伶菜。
そんな表情を浮かべたのはなぜだかわからなかったが、大丈夫と口にした彼女を信じて検査を始めることにした。



胎児は順調に成長。
胎盤の位置も胎盤の中の羊水量も問題なく、一安心。
胎児、母体ともに安定してきたことがエコー検査でもわかった。


前回のエコー検査
その時の結果でも胎児の成長は順調だった
でも、胎児の写真を見た伶菜はここを飛び出して屋上へ向かって飛び降りようとしたぐらい動揺した

伶菜のお腹の中にいる胎児は別れた男との間にできた子供
その成長をあの時の彼女は受け入れられなかったのだろうか?

まだその時の伶菜の心情を捉えきれていない俺は今回の検査結果をどう伝えればいいのか迷う

このまま本人に伝えずに俺達医療スタッフがきちんと状態把握していればいいのかもしれない
でも、伶菜自身が胎児と向き合うことをしなければ、きっと母親として前には進めない

彼女を守るためにも・・・・彼女の背中を押してやらなくてはならないのではないか?


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