ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋


取りあえず、康大クンに捨てられた(正確に言うと置いていかれた?)後に私の身に起こった事情を話して
ちゃんとそれを理解して貰った上でお兄ちゃんと話して貰わないと
なんだかややこしいことになりそうな気がするから・・・


『また、彼にも予定聞いてみるから、お兄ちゃんの都合のいい日教えてね!』

頭の中で考えていることを無意識のうちに口にしてしまう・・・そういう私の悪いクセがでないように細心の注意を払いながら彼にそう話しかける。


「わかった。今日、勤務予定表を確認してくるから。また後でな。行ってきます!」

『行ってらっしゃい♪』


私の行ってらっしゃいの返事に彼は振り返ることなく、私に背中を向けたまま、肩越しにバイバイのジェスチャーをしてから歩いて行ってしまった。



これもいつもの出勤時の光景
これももうすぐ見られなくなる

また、泣きそう
でも、泣いてる場合じゃない

康大クンがお兄ちゃんに直接、結婚の話をしてしまう前に
私から康大クンに自分の事情を話しておかないといけない



『康大クンの電話番号は・・・あっ・・・』



デニムのポケットに入れておいた自分の携帯電話を手に取った瞬間、自分の頭の中で起きたフラッシュバック。

・・・それは携帯電話を手にしたままの左手首に剃刀をあてうっすらと血が滲んでいる様子。
・・・それは康大クンに三股をかけられていたと告げられた上に仕事まで突然解雇され、自暴自棄になって行った行為。
・・・その行為を行う前、私は右手を震わせながら康大クンの携帯電話番号とメールアドレスを消去して、その携帯電話を剃刀に持ち替えた


そんな過去までフラッシュバックする。
それによって私は、どうしようもなくやるせない気持ちに襲われる。


やるせない気持ちなんて久しぶり
少なくとも、日詠先生に命を救われて自ら死ぬことを諦めた時からは感じたことがないような気がする

日詠先生に、お兄ちゃんに守られていたからかな?
改めて感じる・・・彼の存在の大きさを

でも強くなる・・・そう決めたから

フラッシュバック現象に
どうしようもなくやるせない気持ちに
負けない

そんな自分にならなきゃ



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