ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋



『あの時から、どれくらい経ったんだろう?』

医局に向かう途中の短い時間でさえ、
お兄ちゃんとそして彼や私を支えてくれている大切な人達との思い出を想い起こさずにはいられない


でも、こうやって過去の自分を振り返ること

それはお兄ちゃんのもとから自立しようとしている自分が
長い人生の中でのほんの僅かな期間だったけれど、彼と過ごした ”ささやかだけど幸せだった日々” に固執しないように
ちゃんとけじめをつけるために必要なこと
・・・そう思えるんだ


『ココ曲がった先にお兄ちゃんいるかな?』


一旦、足を止めてベビーカーに座り足をぶらぶらさせて遊んでいる祐希の顔を覗き込みそう話しかけた私。
この角を曲がった先に、医局がある。


そういうば、この場所で私
三宅教授の娘さんにも言われたな・・・
”アナタは日詠クンのお荷物なんだ” って

その時から私、彼の傍にこのまま居てもいいのか?って迷い始めたんだ

でも迷うのももう終わり
私は私の道を歩み
お兄ちゃんは彼の道を歩むんだから・・・


『さ、着替え、渡しに行かなきゃ!』

ちゃんと気持ちが前向きになっていた私はじっと前を見据えてから、その角を曲がろうとしたその瞬間だった。




「こちらが先程お話したプランが載っているパンフレットです。」


あれ、この声
康大クン?!



なんでこんなところに?
医局って関係者以外立ち入り禁止区域じゃなかったっけ?



「ありがとう。」

ん?この声も
もしかして、お、お兄ちゃん?!


「日詠先生もお忙しいでしょうから、私はここで失礼致しますが、もし、この商品にご興味を持って頂けたようでしたら、いつでも声をかけて頂けると嬉しいです。」



ヤダッ、どうしよう
康大クン、もうお兄ちゃんを見つけ出しちゃったの?

もしかして、もう私との結婚のこととか
お兄ちゃんに話しちゃったの?

しかもパンフレットって・・・何の?
旅行?
それとも、結婚式場?!

まさか・・ね・・・



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