ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
一瞬、全身をぐっと震わせた伶菜。
『そんな格好でウロウロすると、風邪ひくぞ。』
抱きしめるというあり得ない行動を誤魔化そうとしてやっと出てきた言葉は自分でも意味不明。
俺と気がついてくれたせいなのか、伶菜の体の震えは少しだけ弱まった。
その後、ぎこちなく ”先生?”と問いかける伶菜。
彼女が叫び声を上げないから周囲は気がついていないだろうけど
明らかに俺は完全に不審者
いや、犯罪者だな
それでも
『ごめん・・しばらくこのままでいて。・・伶菜。』
彼女の体温を自分の胸で直に感じた俺は彼女をすぐに放してなんてやれなかった。
「日詠先生?・・・先生?大丈夫?」
『・・・・ああ、大丈夫・・・だ。』
俺の体調を心配してくれて
「このまま・・えっと、このままじゃ、先生・・・・?」
俺の病院内での体裁をも気にかけてくれる伶菜に甘えて、寝たフリまでして彼女を抱きしめ続けた。
ついさっき新生児と看護師のやり取りを見つめながら、寂しそうな表情を浮かべた彼女に
俺がすぐ傍にいるってことをわかって欲しくなって。
そんな俺の想いが伝わったのか、それともどうしていいのかわからなかったのか
寝たフリをしたまま彼女を抱きしめている俺を伶菜はそのままにしてくれた。