ユア
「優愛…ごめん」

俺はユアの足下にうずくまった。

涙があとからあとから溢れだす。

優愛を忘れようとして涙を飲んだ
泣く権利はないと必死で押さえ込んだ涙が時を越えて溢れだす。

「誠二くん…」

ユアは指輪のついた細い手を俺の膝においた。

大きなあの目で俺を覗きこむ。

「知ってたよ」

「全部、知ってたよ」

「だから、私はここに来たんだから」

ユアの目は心なしか潤んでいる。

「優愛…忘れてたんだ。お前を大切に思ってたこと」

「大丈夫だって言葉も、口下手なお前が俺を信じて言ってくれてたってこと」

「あの時、優愛にあんな事を言わなければ…」

優愛は生きて俺の側にいたのに。

「誠二くん…」

泣かないで。

「私は怒ってないよ」

「あの時、出ていったのだってそう」

「誠二くんが、つらそうな姿を見ているのが苦しかったから」

「私には元気付けることしかできなかったから」

「私には力がないって…思っちゃって…だから逃げたの」

ユアは後ろを向いた。
俺に泣き顔を見せないようにするためだろう。

「誠二くん、今幸せ?私がいなくても大丈夫?」

それは、俺が聞きたかった言葉だ。
俺といて幸せだったか。
たった一人でこの世界から旅立って寂しくないか。
でも、俺にはこれしか言えなかった。

「幸せだよ。優愛にもう一度会えたから」

ユアは、俺の体に腕を回した。

ユアが俺の頭をなでた。

俺とユアの唇が触れあった。
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