一途な彼は真面目で純粋で歳下で。《完結》
慎一が言いたい事は分かる。
彼は私を思って別れを選んだんだと。
実際に彼の母親は周りからの圧力に追い詰められて辛い思いをした。
だから同じ目に遭わせたくないと思ってくれたに違いない。
そして弟もまた、同じように私を心配してくれているということも。
「うん、ちゃんと分かってるよ。」
大企業の御曹司と一般家庭の私。
釣り合いなんてとれないし、認められる事だって容易な事じゃない。
彼の事を諦めればきっと幸せな人生が歩めると、、そう言いたいんだよね?
分かってるよ。
分かってるけどっ、、。
やり切れない思いについ拳に力が入る。
「でもアイツは馬鹿だよ。」
「え?」
弟の言葉に驚いて顔を上げるとさらに続けた。
「幼少期から弟育てに家事と勉強も両立して、ついでに他人の子まで面倒きてきた姉貴のタフさ分かってないからな。そこらへのか弱い女と一緒にされても困るつーの。それにこう見えて一途で熱しにくいけど冷めにくい。姉弟の中でも1番、面倒くさいほどに頑固でこうと決めたらそれを貫き通すし。」
「、、それ褒めてるの?」
「さぁ?ただアイツは長い事姉貴の事を見てきた筈なのに馬鹿だなって話。」