一途な彼は真面目で純粋で歳下で。《完結》
あまりの怒りで震えていると真由ちゃんが眉をひそめた。
「落ち着いて聞いてね。この話、、あちらこちらに言い回っているのは片瀬くん本人なの。」
「は、、、?」
「、、最初にこの噂が広まった時、正直な所〝いい気味だ〟って思ったよ。どんな理由があっても紗江を傷つけたのは変わらないし、少しは片瀬くんも紗江と同じに気持ちになればいいんだって思った。でも、、噂はあっという間に広まって、にわかに信じられない話だったから本人に突き詰めたの。そしたら『嘘偽りの無い事実です』って、、そう言ったのよ。」
「違うっ!何一つ事実なんかじゃない!!!、私っ、、、!皆んなに誤解だって伝えてくるっ!!!!だって!!!暁人くんはっ、、別れ際、あんなに震えてたっ!!!!!」
彼が最後に見せた姿を思い出すだけでも苦しくなる。
自惚れなんかじゃ無い。
私は彼に大事にされてた。
それを皆に伝えようと非常階段のドアノブに手を掛けると、後ろからその手を掴まれる。
「紗江っ待って!!!!!その時片瀬くんは覚悟を決めたような目をしてた。だからその時分かったの。自分が悪者になろうとしてるんだって。2人が別れたと分かったら殆ど会社にはいない彼よりも常に会社にいる紗江に矛先がむくって思ったんだと思う。だから自分から嘘の情報を流して紗江を守ろうとしたんだよ。それが別れを選んだ片瀬くんの覚悟だよ。それが分かったら私は何も、、言えなかった。」