心がささやいている
すると、横から別の女子生徒が話に入ってくる。

「なぁに?誰のハナシ?」
「んー?月岡さんがね、いつも気付いたらいないなって話」
「あぁ月岡さん、ね。あのコ…愛想ないよねぇ」
「えー?そう?そんな嫌なイメージないけどなぁ」

途端に始まった女同士の会話に男子生徒は横で自然と聞き手側に回っている。

「まぁ確かに悪いイメージはないけど。でも、全然笑わなくない?私、あのコが笑ってるとこ今まで見たことないんだけど」
「んー?そう?…かな?まあ、言われてみれば確かに。声を上げて笑ってるとことかは想像できないかも」
「でしょ?」
「彼女、大人しいもんね。かと言って暗い感じではないんだけどさ。なんか大人びてるっていうか」
「単にスカしてるだけじゃん。余裕ぶってるっていうかさ。悪く言えば、お高くとまってるっていうの?そんな感じ」
「えぇ?そこまで嫌な感じはしないけどなぁ」

一人の女子は、その噂の人物のことを明らかに良くは思っていない様子で、不快な表情を隠すことなく続ける。

「まぁね。でも、何考えてるか分かんない感じがして私はあんまり好きじゃない」


そんな女子同士の辛辣な会話に、隣で静かに耳を傾けていた男子生徒が呆れたように肩をすくめた。

「おーおー、やっぱ女同士ってこえぇなァ。普段は笑って一緒にいるくせに、んなこと考えてんのかよ」
「…なによ。何か文句でもあんの?」
「いや、別に。女同士のゴタゴタになんて興味ねぇけどさ、分かってねぇなァと思って」
「なにがよ」

睨んでくる一人に、男子生徒は鼻で笑って言った。
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