心がささやいている
「ちょっ…ちょっと待って」
辰臣は片手で頭を抱えると己の頭の中を整理しながら浮かんだ疑問を口にした。
「じゃあ、この子は自分で逃げてきたってこと?飼い主の元から…?」
「うん」
「ずっと酷い目にあってて、耐えられなくなって?」
「うん」
「そんな…。ことって…」
辰臣はショックを隠しきれなかった。こんなに可愛くて小さな動物に、そんな酷い仕打ちをする人間が存在するのかと。それも、自ら飼っておきながらも、だ。
だが、思い出してみれば確かに保護した当初、このコは人に怯えているふしが見て取れた。診察して貰った際に獣医にも言われたことだった。怪我が酷かったので出来る抵抗は限られていただろうが、暴れて僅かながらも手を焼かせたことは記憶に新しい。最終的には、自分に危害を加える存在ではないのだと理解してくれたのか大人しくしてくれていたが。だが、日常的に酷い目に合わされていたというのなら、それも頷けると思った。
(動物たちの命を何だと思っているんだっ!自分の所有物なら何をしてもいいとでもいうのかっ?!)
信じられない気持ちとともに奥底からは怒りが沸々と湧いてくる。
そんな辰臣の心情を察したのか、静かにこちらを見つめていた子犬が「きゅうん」と小さく鳴いた。
「ごめんな。つらかったな…」
そっと子犬に手を伸ばして撫でてくる辰臣に、子犬は嬉しそうに尻尾を振り身体を乗り出してくる。少女は子犬の意のままに、そっと辰臣の腕の中に渡してくれた。
少女の話を裏付ける証拠は何もない。でも、不思議と疑う気にもなれなかった。
辰臣は片手で頭を抱えると己の頭の中を整理しながら浮かんだ疑問を口にした。
「じゃあ、この子は自分で逃げてきたってこと?飼い主の元から…?」
「うん」
「ずっと酷い目にあってて、耐えられなくなって?」
「うん」
「そんな…。ことって…」
辰臣はショックを隠しきれなかった。こんなに可愛くて小さな動物に、そんな酷い仕打ちをする人間が存在するのかと。それも、自ら飼っておきながらも、だ。
だが、思い出してみれば確かに保護した当初、このコは人に怯えているふしが見て取れた。診察して貰った際に獣医にも言われたことだった。怪我が酷かったので出来る抵抗は限られていただろうが、暴れて僅かながらも手を焼かせたことは記憶に新しい。最終的には、自分に危害を加える存在ではないのだと理解してくれたのか大人しくしてくれていたが。だが、日常的に酷い目に合わされていたというのなら、それも頷けると思った。
(動物たちの命を何だと思っているんだっ!自分の所有物なら何をしてもいいとでもいうのかっ?!)
信じられない気持ちとともに奥底からは怒りが沸々と湧いてくる。
そんな辰臣の心情を察したのか、静かにこちらを見つめていた子犬が「きゅうん」と小さく鳴いた。
「ごめんな。つらかったな…」
そっと子犬に手を伸ばして撫でてくる辰臣に、子犬は嬉しそうに尻尾を振り身体を乗り出してくる。少女は子犬の意のままに、そっと辰臣の腕の中に渡してくれた。
少女の話を裏付ける証拠は何もない。でも、不思議と疑う気にもなれなかった。