心がささやいている
何より、今までずっと大人しく腕の中に収まっていたこの子が突然暴れて逃げ出した理由が、飼い主の家へ近付いたことによるものだとしたら、その突飛な行動も頷けるのだ。
今は普段通り大人しく腕の中で抱かれながら尻尾を振っている子犬の姿に、何とも言えない切なさがこみ上げてくる。
(こんなに可愛いのに…)
それに、ふわふわで…あたたかい。
どんなに小さくて弱い存在でも確かにここにあるのは、かけがえのない大切なひとつの命だ。人間の傲慢なんかで、これ以上この子を傷つけたくはなかった。守ってあげたい。心からそう思う。
(僕に出来ることは、何だろう?)
辰臣がそう考えを巡らせていた、その時だった。
腕の中の小さな存在がビクリと大きく震えるのと同時に、突然小さな手に力強く腕を掴まれた。
「おにいちゃんっ、こっち!」
小声ながらも少女は声を上げると、かがんだまま戸惑っている辰臣を立ち上がらせ、ぐいぐい何処かへ引っ張り始めた。
「ちょっ…急にどうしたのっ?」
何があったというのだろうか。突然の少女の行動に訳が分からぬまま、手を引かれるままに後をついていく。当然、掴まれていない方の腕にはしっかりと子犬を抱えていたが、心なしかその小さな身体が震えているような気がする。
辰臣が不思議に思いながらも連れられていった先は公園内の植え込みで。少女と一緒になって小さくしゃがみ込んだその時、公園内に人の声が響き渡った。誰かが公園にやって来たようだった。
「んだよっ。連れて来るって言ってたのに全然来ねぇじゃんか」
今は普段通り大人しく腕の中で抱かれながら尻尾を振っている子犬の姿に、何とも言えない切なさがこみ上げてくる。
(こんなに可愛いのに…)
それに、ふわふわで…あたたかい。
どんなに小さくて弱い存在でも確かにここにあるのは、かけがえのない大切なひとつの命だ。人間の傲慢なんかで、これ以上この子を傷つけたくはなかった。守ってあげたい。心からそう思う。
(僕に出来ることは、何だろう?)
辰臣がそう考えを巡らせていた、その時だった。
腕の中の小さな存在がビクリと大きく震えるのと同時に、突然小さな手に力強く腕を掴まれた。
「おにいちゃんっ、こっち!」
小声ながらも少女は声を上げると、かがんだまま戸惑っている辰臣を立ち上がらせ、ぐいぐい何処かへ引っ張り始めた。
「ちょっ…急にどうしたのっ?」
何があったというのだろうか。突然の少女の行動に訳が分からぬまま、手を引かれるままに後をついていく。当然、掴まれていない方の腕にはしっかりと子犬を抱えていたが、心なしかその小さな身体が震えているような気がする。
辰臣が不思議に思いながらも連れられていった先は公園内の植え込みで。少女と一緒になって小さくしゃがみ込んだその時、公園内に人の声が響き渡った。誰かが公園にやって来たようだった。
「んだよっ。連れて来るって言ってたのに全然来ねぇじゃんか」