心がささやいている
「で、お前はどうする?ここでお茶飲んで待ってて貰っても全然構わないんだが…」
「あ、気にしないで。今日はこのまま帰るよ」

もともとは、そのつもりだったんだし。…とは言わないでおく。

「そうか…。強引に連れて来た手前、悪いな。まぁ、すぐ戻って来られるとも限らないし、その方が良いかもな。どんだけの情報があるのか分からないが、実際あてもなく捜すとなると苦戦するのは目に見えてるしな…」

そう言うと、「せめてこれ位は飲んで行けよ」とカップを目の前に差し出してくれる。
(強引に連れて来た自覚、あったんだ…)
ちょっぴり、意外だった。

「大変そう、だね。ネコさがし…」
「時間も殆どないみたいだしな。ある意味、無謀な依頼なんじゃないか?…まったく、日々猫の手も借りたいぐらいだっていうのに」
「あー…。…ネコだけに?」
「そ。猫だけに」
「………」

何故だか満足げに微笑んでいる颯太に咲夜が心の中で脱力していると、準備が終わったのか上着を羽織りながら辰臣が奥から出て来た。

「ごめんね、咲夜ちゃん。せっかく来てくれたのにバタバタしちゃって。ろくなおもてなしも出来なくって悪かったね…」
「いえ。全然、大丈夫です」
「ホントにごめんね。本当なら今日、咲夜ちゃんにちょっと相談したいことがあったんだけど…。また、近いうちに聞いて貰えるかな?」
「それは…構わないですけど。相談、ですか?」

(大空さんが自分になんて…何だろう?)

?を飛ばす咲夜の横で、颯太も不思議そうに耳を傾けている。
そんな二人の様子に、辰臣はクスリ…と笑うと。

「そんな深刻な話じゃないから安心して。ランボーのことでちょっと意見を聞きたいだけだから」

そう言って、ウインクをしてみせた。
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