心がささやいている
それからだ。人の心の囁きが聞こえるようになったのは…。本当はそれ以前にも聞こえていたのかも知れないが、ハッキリと自覚をしたのはその時だった。
「ママは、さやがいない方がよかったの…?」
思わず呆然と聞き返してしまった自分に。母はハッとすると俯いていた顔を上げて慌ててそれを否定した。
「咲夜、何を言い出すの?そんな訳ないでしょう?」
「だって…。ママが…っ…」
とうとう泣き出した私に母は動揺していたようだったが、今度は困ったような笑顔を見せると。
「ごめんねっ。お腹が空いてるのよねっ?もうこんな時間。今すぐ何か作るから待っててねっ」
そう言って、慌てて取り繕うように動き出した。
疲れた背中を見せながらもキッチンに立つ母からは、再び声ならざる声が聞こえて来た。
『ビックリした。心を見透かされたのかと思ったわ』
その日以降も、母の本音は何かしらの拍子に聞こえ続けていた。それでも最初は、自分に対しての母親の本音だけが特別に聞こえているのだと思っていた。
母にとって自分は枷でしかなく、疎ましい存在でしかなかったから。少なくとも父親が出て行った後は…。
そして、そんな母の後悔が強いからこそ、その気持ちが自分には特別に伝わってしまうのだと思っていた。
けれど後々それは母だけではなく、誰のものでも聞こえていることに気が付いたのだ。そして、表面上に出ている言葉や表情、行動とは反対の想いの方が多く聞こえて来るということも。
その人が心に秘めている想いの強さが強ければ強い程、囁きも大きくなるようだった。
「ママは、さやがいない方がよかったの…?」
思わず呆然と聞き返してしまった自分に。母はハッとすると俯いていた顔を上げて慌ててそれを否定した。
「咲夜、何を言い出すの?そんな訳ないでしょう?」
「だって…。ママが…っ…」
とうとう泣き出した私に母は動揺していたようだったが、今度は困ったような笑顔を見せると。
「ごめんねっ。お腹が空いてるのよねっ?もうこんな時間。今すぐ何か作るから待っててねっ」
そう言って、慌てて取り繕うように動き出した。
疲れた背中を見せながらもキッチンに立つ母からは、再び声ならざる声が聞こえて来た。
『ビックリした。心を見透かされたのかと思ったわ』
その日以降も、母の本音は何かしらの拍子に聞こえ続けていた。それでも最初は、自分に対しての母親の本音だけが特別に聞こえているのだと思っていた。
母にとって自分は枷でしかなく、疎ましい存在でしかなかったから。少なくとも父親が出て行った後は…。
そして、そんな母の後悔が強いからこそ、その気持ちが自分には特別に伝わってしまうのだと思っていた。
けれど後々それは母だけではなく、誰のものでも聞こえていることに気が付いたのだ。そして、表面上に出ている言葉や表情、行動とは反対の想いの方が多く聞こえて来るということも。
その人が心に秘めている想いの強さが強ければ強い程、囁きも大きくなるようだった。