心がささやいている
でも…。
こんな能力が何になるというのだろう?
こんなもの、自分には必要なかった。ずっと気付かなければ良かったと、今は後悔しかない。
世の中、知らない方が幸せなことは沢山ある。少なくとも自分はこの能力さえなければ母の本音など知り得ることもなく、もう少し母と上手く付き合うことが出来た筈だ。
彼女は決して私という存在に対しての不満や文句を面と向かって口にすることはなかったし、離婚する以前と同様に母親として存在してくれていた。その心の奥底にある本音さえ除けば、彼女は一般的な良い母親だったに違いないのだ。
それでも…。
私は知ってしまった。
母は裏切った父のことをとても恨んでいて。そして、当然その血を半分引いている私を煩わしいと感じるようになっていったことを。成長していくにつれ、父親に似ていく容姿も母にとっては不愉快以外の何物でもなかったらしく、知り合いの人に『咲夜ちゃんは父親似だね』と言われる度に母の心は荒んでゆき、次第にそんな私を視界に入れなくなっていったのだ。
そんな現実が苦しくて。
たまに見せてくれる笑顔の裏で囁かれる母の本音が怖くて。哀しくて。
どんなに表面上で気を使ってくれていても素直に喜ぶことの出来ない可愛いげのない自分自身が何より嫌いだった。
でも実際は、自分がどんなに良い子でいようとも母にとっては関係ないのだ。私が父と母の娘である限り。
そんなの、やってられない。
気が付けば、母との心の距離は修復不可能な程に開いてしまっていた。
こんな能力が何になるというのだろう?
こんなもの、自分には必要なかった。ずっと気付かなければ良かったと、今は後悔しかない。
世の中、知らない方が幸せなことは沢山ある。少なくとも自分はこの能力さえなければ母の本音など知り得ることもなく、もう少し母と上手く付き合うことが出来た筈だ。
彼女は決して私という存在に対しての不満や文句を面と向かって口にすることはなかったし、離婚する以前と同様に母親として存在してくれていた。その心の奥底にある本音さえ除けば、彼女は一般的な良い母親だったに違いないのだ。
それでも…。
私は知ってしまった。
母は裏切った父のことをとても恨んでいて。そして、当然その血を半分引いている私を煩わしいと感じるようになっていったことを。成長していくにつれ、父親に似ていく容姿も母にとっては不愉快以外の何物でもなかったらしく、知り合いの人に『咲夜ちゃんは父親似だね』と言われる度に母の心は荒んでゆき、次第にそんな私を視界に入れなくなっていったのだ。
そんな現実が苦しくて。
たまに見せてくれる笑顔の裏で囁かれる母の本音が怖くて。哀しくて。
どんなに表面上で気を使ってくれていても素直に喜ぶことの出来ない可愛いげのない自分自身が何より嫌いだった。
でも実際は、自分がどんなに良い子でいようとも母にとっては関係ないのだ。私が父と母の娘である限り。
そんなの、やってられない。
気が付けば、母との心の距離は修復不可能な程に開いてしまっていた。