心がささやいている
「とりあえず分かった。辰臣さんには、すぐに上がるように伝えとく。だから、お前はもう帰れ。あんま遅くなると家の人が心配するぞ」
何でもないことのようにそう返すと、月岡は心底驚いたようにこちらを見上げてきた。
「…信じて、くれるの?こんな話を?」
「何だよ嘘なのか?」
首を傾げながら質問に質問で返すと、彼女は再びふるふると首を横に振り、しっかりと否定の意を示した。
普段、何事にも動じないような、どちらかというと感情が表情に現れにくい彼女にしては珍しくその不安げな様子に思わず小さく息を吐く。
「なんつーか、さ。確かに普通に考えたら信じ難い話ではあるんだろうけど。でも、この状況でお前がそんな嘘や冗談を言うような奴じゃないと俺は思ってるし」
それは、俺が勝手に思ってるだけだけど。実際、俺はまだそんなにコイツのことを何も知っている訳じゃない。だが、それでもコイツがこの状況でそんなデタラメを口にするとは思えなかったし、何よりそんな作り話をわざわざする意味などない筈だ。
それに、知り合ってほんの数日の間に見ていて感じていた違和感が繋がって、妙に納得出来てしまったのだ。
あの、ふとした瞬間の何とも言えない月岡の表情。
それが、その声に反応してのことだとしたら全ての辻褄が合うと思った。
ふとした瞬間、何かに気付いたように動きを止める動作は、本当に一瞬ではあるが俺の目には違和感を残した。
そして、そんな時の彼女の様子は俺の中にちょっとした衝撃を起こした。
その長い睫毛に縁取られた伏せ目がちな瞳は、どこか哀しげな不思議な色を含んでいて…。そして、何かを汲み取ろうと微かに揺れる。
その様は、どう表現すればいいのか。
そこに他意などないし全く俺の柄ではないのだが、そんな彼女を素直に綺麗だと思った。
何でもないことのようにそう返すと、月岡は心底驚いたようにこちらを見上げてきた。
「…信じて、くれるの?こんな話を?」
「何だよ嘘なのか?」
首を傾げながら質問に質問で返すと、彼女は再びふるふると首を横に振り、しっかりと否定の意を示した。
普段、何事にも動じないような、どちらかというと感情が表情に現れにくい彼女にしては珍しくその不安げな様子に思わず小さく息を吐く。
「なんつーか、さ。確かに普通に考えたら信じ難い話ではあるんだろうけど。でも、この状況でお前がそんな嘘や冗談を言うような奴じゃないと俺は思ってるし」
それは、俺が勝手に思ってるだけだけど。実際、俺はまだそんなにコイツのことを何も知っている訳じゃない。だが、それでもコイツがこの状況でそんなデタラメを口にするとは思えなかったし、何よりそんな作り話をわざわざする意味などない筈だ。
それに、知り合ってほんの数日の間に見ていて感じていた違和感が繋がって、妙に納得出来てしまったのだ。
あの、ふとした瞬間の何とも言えない月岡の表情。
それが、その声に反応してのことだとしたら全ての辻褄が合うと思った。
ふとした瞬間、何かに気付いたように動きを止める動作は、本当に一瞬ではあるが俺の目には違和感を残した。
そして、そんな時の彼女の様子は俺の中にちょっとした衝撃を起こした。
その長い睫毛に縁取られた伏せ目がちな瞳は、どこか哀しげな不思議な色を含んでいて…。そして、何かを汲み取ろうと微かに揺れる。
その様は、どう表現すればいいのか。
そこに他意などないし全く俺の柄ではないのだが、そんな彼女を素直に綺麗だと思った。