死者の幸福〜最期のメッセージ〜
今思えば体型も卵だったかな、と朝日奈美紅は言う。

藍たちは、朝日奈美紅から有働海彦について色々訊ねたが、わかったことは有働海彦がいい人だということだけだ。

仕事熱心で、家族思い。浮ついた話など誰も耳にしたことがないという。お酒もタバコもせず、ギャンブルもしたことがないという。

「うわ〜、こんな男いいなぁ〜」

朝子がそう言い、「もうすぐ結婚するのに何言ってるんだ」と聖が呆れる。

朝日奈美紅の話からも、特に情報を手に入れることはできなかった。



次の日、藍は仕事を休んでいた。保育園が急遽休みになったためだ。

藍の両親は東北にいるため、預かってもらうことなどできない。大輔の両親は数年前にどちらも他界している。藍が仕事を休むしかない。

「お母さん、鶴折ったよ」

藍は仕事のことを一時的に忘れ、隼人と遊ぶ。隼人の無邪気な笑顔を見ていると、疲れも吹き飛ぶのだ。

「上手に折れたね。お母さんも何か折ろうかしら」

藍もテーブルに置かれた折り紙を手に取り、折り始める。作るのは花模様だ。藍が作っていく様子を、カカオと隼人は一緒になって見ている。
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