死者の幸福〜最期のメッセージ〜
「海彦さんは会社ではどんな人だったんですか?」

大河の問いに、朝日奈美紅は「とてもいい人でした」と懐かしそうに微笑む。

「仕事を丁寧に教えてくれて、多くの人に慕われていました。責任感も強くて、失敗をしてしまったらフォローをしてくれる素敵な人でした。……でも、人間ドックに行ってから塞ぎ込むようになって、ある日会社に突然来なくなったんです。家にも帰ってないって……。やっと見つかったと思ったら……」

朝日奈美紅は涙をこぼす。藍はティッシュを差し出し、その背中を優しくさすった。有働海彦が慕われていた人間だとよくわかる。多くの人が彼の死を悲しんでいるのだから。

「もう、玉子さんって呼べないんですね」

悲しげに言う朝日奈美紅に、「玉子さん?」と聖が首を傾げる。朝日奈美紅は優しく笑いながら言った。

「海彦さん、卵が大好きなんです。お弁当のおかずには絶対卵料理が入っていましたし、ご飯を食べにファミレスに行ったら絶対オムライスや親子丼を頼んでましたから」
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